歯科麻酔で2歳児死亡について

今朝のニュースで「歯科麻酔で2歳児死亡」のニュースが流れていました。

https://www.asahi.com/articles/ASLDR54KYLDRTIPE00L.html

 

ネットのニュースでの記事も読みました。限られた情報の中ではありますが、私見を書こうと思います。

 

・2歳の女児が虫歯治療のため歯科医院に来院

・ネットで拘束し、ラバーダム(ゴム)防湿し、リドカインにて治療

・治療後、様子がおかしいと両親が訴えたが、女性歯科医師はよくあることと言い適切な処置をしなかった

・その後、容態が急変し、両親が病院に連れて行く

・病院にて歯科麻酔による中毒による低酸素脳症で死亡

・歯科医師が業務上過失致死にて書類送検

 

おおよそこのような内容であります。

 

3歳未満の児童の場合、話して理解させての治療が難しいためネットで拘束しての治療はありえます。(私はしたことがありませんが)

ネットでの拘束は二次診療所での治療の際、障がいのある方にすることはあります。その場合、心電図、血圧、脈拍、血中酸素濃度などのモニタリングを行います。それは拘束することによって体に表れる変化が分かりづらいことと、障がいがある方は何らかの基礎疾患がある場合が多いためです。

 

また、ラバーダム防湿による治療も子供に限らずすることはあります。

これは視野の確保や、治療部位の保護(口を開けたままにできない場合や、治療部位を舌でなめたりすることからの保護)の目的でしますが、子供の場合、顔が小さく鼻にまでラバーダムがかかる場合、呼吸が困難になることがあるので注意が必要です。

 

その後、リドカインにて麻酔注射をして治療なのですが、リドカインという麻酔薬は広く使われているもので、私も毎日使っています。麻酔薬に含まれる薬剤にアレルギーがあったり、基礎疾患によりリドカインが使えない場合は別の麻酔薬を使用する場合もあります。

 

通常の場合、麻酔薬は同時に10本以上打ったとしても中毒にはなりません。今回のケースでは3本打ったというような報道もありますが、3本では通常では中毒になることはありません。ただ花粉症がそうであるように、今まで大丈夫だったものが急にショック症状を起こすリスクはあります。

 

「歯科医院に救急車を呼ぶと評判が下がるから呼ばない」という話もありました。しかし、通常と違う症状が出れば救急車を呼ぶはずだと思います。今回は歯科医が異常に気づけなかったということでしょう。

 

私自身、治療中に急変する患者さんは何度も見ています。多くはストレスから来る貧血が多いので、安静位にしていれば落ち着きますが、一度だけ麻酔注射の後に体調不良を訴え呼吸と脈拍に異常があったため救急車を呼んだことがあります。病院に運ばれた後に落ち着いて入院はしなかったそうですが、過換気症候群でした。これもストレスです。付き添った方の話によると、その方はトラック運転手で深夜の福島までの運転が続き、そうとう疲れが溜まっていたとのことでした。

 

今回のケースは、治療については問題はないと思います。

歯科医の問題は、適切なモニタリングをしなかったこと、容態の変化にあわせて酸素吸入(歯科医院ならどこでもあります)や場合によってはエピネフリン注射などの救急処置を怠ったこと、救急車を呼ばなかったことだと思います。

 

また、女児は虫歯が8本あったと聞きます。「歯科医師数の上昇に比べて子供の虫歯が減っているので削らなくてもよい歯を削ったのではないか?」といようなコメントもありました。

確かに子供の虫歯は昔に比べて激減しています。それは親御さんの意識の変化によるものですが、極端に虫歯が多い子供がいることも事実です。ネグレクトの疑いがある子供もたまに見かけます。

乳歯は平均的に2歳半で歯列が完成します。上下合わせて20本の歯が生えそろいます。子供の歯が虫歯になるのは親の責任です。虫歯の大きさは分かりかねますが、2歳で8本の虫歯は多すぎます。

仕上げ磨きをしっかりする。定期的に歯医者を受診し、フッ素塗布、虫歯のチェックをしてもらうように親御さんは心がけてください。

(医)聖湘会

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