入れ歯安定剤（ポリグリップなど）について

高齢者が多くなってきたせいもあってか、最近は入れ歯を作ったり調整したりする機会が多くなってきました。訪問診療でも入れ歯の作成や調整が多くなっています。

その際に困るのが入れ歯安定剤を使っている患者さん。

調整するにも、新しい入れ歯を作るにしても、入れ歯の内面がべとべと、歯茎もべとべとで治療に入れません。全部拭き取らなくてはならないのですが、これが大変な苦労です。

「使っちゃダメなの？」と患者さんは言われますが、ま、CMしている位だから使っても良い物だろうと思っている方が多いです。

でも考えてみてください。CMで歯医者さんが出演しているのは歯ブラシ、歯磨き粉ではよく見かけます。入れ歯洗浄剤のCMにもたまに出ています。が、入れ歯安定剤のCMに出ている歯医者さんを見たことはありますか？入れ歯安定剤のCMには入れ歯が痛い緩いで困っている高齢者やタレントが出ているだけで歯医者さんが出演しているものはありません。

何故か？入れ歯安定剤を使って欲しいと思っている歯医者さんは誰1人としていないからです。入れ歯が痛い、入れ歯が緩い、入れ歯が安定しないなら歯医者さんに調整に来て欲しいのです。また、安定剤を使うことによって顎堤（顎の骨）が吸収するという報告もあります。安定剤を使うことによって入れ歯がますます合わなくなる危険性もあるのです。

安定剤は使わないでください。

唯一、使っても良い状況を考えるなら、近くに通える歯医者さんがない、もしくは訪問診療で来てくれる歯医者さんがないという隔離された患者さんだけです。隔離された状況でなくなったら歯医者さんに行ってください。